主なビデオソフトメーカーの解釈と回答【1】





 この調査は現行の改正著作権法が施行される前の1988年11月より約4ヶ 月間かけてビデオソフトのコピーに関する問い合わせを主なビデオソフトメーカ ー42社に対して行ない、その解釈や回答をまとめて、パソコン通信ネットワーク 旧PC-VANのSIG-AVSQUAREに掲載されたものです。従いまして、現在では 法解釈が変っている可能性があることや、14年も前の調査であるため回答し た会社がすでに存在しないこともありますので、その点はご了解頂きたいと存じ ます。


1988年の11月上旬,ビデオ産業の発展のためPC−VANなどのパソコン通 信ネットワークにて「コピーの自粛」を訴えたところ,著作権などについて多くの 意見が出されました.そのため主なビデオソフトメーカーに対し次の問い合わせ を行い回答を求めました.



1.質問事項


                           昭和63年11月15日
ビデオソフトメーカー各位殿

ビデオソフトのコピーに関する問い合わせ

前略
 PC−VAN(主宰者 日本電気,会員数約4万5千人)およびEYE−NET(主 宰者フジミック,フジサンケイグループ,会員数約6千人)などのパソコン通信ネ ットワークにおいて,どこまでが違法コピーで,コピーはどの程度まで許される のかが疑問になっております.
 コピー問題については微妙な点が含まれるため,貴社を含めた主なビデオソ フトメーカーの御見解を伺いたいとおもいます.つきましては,下記の件でご回 答頂ければ幸いに思います.

[1] テレビやラジオの番組の録画は,家庭内における個人の使用に限って黙 認されていますが,レーザーディスク(LD)やレンタルソフトを含めたビデオソフ トのコピーは,家庭内における個人での使用の範囲でもコピーは違法ですか. もし個人がこのような違法コピーを行った場合,貴社は個人を告訴しますか.
 関連ですが,LDなどのソフトのジャケットには「無断で複製,放送,上映,公開 演奏,レンタルすることは法律で禁じられています」と明記されていますが,家 庭内における個人の使用でもコピーは禁止されますか.

[2] 営利に使用しない場合でもコピーは違法ですか.もし違法であれば,テレ ビやラジオの録画や録音も,コピー行為であるため違法と言うことになりません か.

[3] EYE−NETのAVコーナーにおいて「大学祭,学校祭などでの営利を目的 としない上映やコンサートは違法ではない.」という意見がありましたが,この件 について貴社の御見解をお聞かせ下さい.

[4] PC−VANのAV−SIGにおいて,ビデオソフト(テープソフト)の価格は非 常に高いという意見が,かなりありましたが,LDソフトに比べて高い理由はどこ にあるのでしょうか.
アメリカでのビデオソフトの価格は,たとえば「マイ・フェア・レディ」のテープ2本 組が7ドルから8ドル(日本円で千円程度)であり,生テープより少し高いくらいと 聞きます.このように日本との大幅な価格の差は,いったいどこにあるのでしょ うか.

以上の4点について質問致します.宜しくお願い申し上げます.
これらの質問の趣旨は,「合法だから良い」とか「違法だから悪い」という事では なく,一般の使用者一人一人が『コピーを自粛』し,気に入ったソフトは購入する よう心がけることにより,芸能関係者の有形,無形の財産を守り,ソフト産業の 発展とソフトの量産化による価格の低下のためになると判断したためです.
回答が得られましたら,さっそく数社のパソコン通信ネットワークに,アップロー ドし貴社の意見をパソコン通信ネットワークにて反映させるよう努力します.
                                      草々


2.ビデオソフトの著作権などについての主なメーカーの見解


■ レーザーディスク社(現パイオニアLDC社)

[1] レーザーディスク等のビデオソフトおよびレンタルソフトをコピーすること は,家庭内における視聴または個人的な利用であれば,権利者の承諾を得る ことなく行うことができます.

[2] 営利を直接の目的としない場合でも,使用目的が個人的な利用ではなく, あるいは間接的に営利行為に結び付くような利用を目的とするコピーは,違法 行為となります.

[3] 学園祭等における営利を直接の目的としない上映といえども,上映行為 が集客効果を高め,模擬店による収入等,間接的に営利行為に結び付くような 場合には,違法行為となりますので,事前に権利者から承諾を受けることが必 要になります.

[4] 日本とアメリカとのビデオソフトの価格の差は,権利料および品質管理, 製造工程の違い,並びにおよそ10倍の格差がある市場規模の違いが価格の 差となっていると思われます.

尚,著作権法上の解釈につきましては,文化庁著作権課にお問い合わせ頂く のが最善かと思います.




■ 日本ビクター関係会社             昭和63年12月29日
   ビデオテック社
   ビクター音楽産業株式会社
   CIC・ビクタービデオ株式会社
   日本フォノグラム株式会社

 ご質問の1項より3項は,何れも著作権法に関連した内容でございますが,そ 法体系では,条約は法律より上位の法と考えられていますから,日本の著作権 法もこのベルス条約の制約を受ける事もあります.依って,ご質問事項に就き ましては,国内の著作権法の範囲にて,以下のご回答を致します.

[1] 家庭内において,個人が映像ソフトをコピーする範囲内ならば,著作権法 第三十条(私的使用のための複製)により,違法ではありません.
 この条文は,「著作者の目的となっている著作物は,個人的に又は家庭内そ の他これに準じる限られた範囲内において使用する者が複製することができ る」としており,第三者にコピーテープを貸出,或は,グループによる回覧などの 行為は,個人の使用目的から逸脱しますから違法となりますと共に,領布権に 抵触する恐れもあります.

告訴に就いては,前記の著作権法第三十条(私的使用のための複製)を逸脱 する,悪質な行為が判明した場合は,先ず,違法行為を止めるよう文書にて警 告します.それでも無視するよdうであれば,刑事及び民事上の法的処置を取る 事になるものと思います.
関連するご質問に就いて禁止に関する明記は,前記の個人の使用目的から逸 脱を防止する目的ですので,特に敢えて記入をしていません.

[2] 営利目的でなくとも違法です.
 営利目的でないコピーの主旨ですが,通常は第三者に配布,或は,貸出など の無償による行為が考慮されますので,これらの場合は何れも前記の条文より 逸脱するためです.
又,映像ソフト及びテレビ,ラジオよりのコピーも,個人の使用目的以外はすべ て違法になります.

[3] これも違法です.
 即ち,このような催しは営利目的でなくても,不特定多数が対象となりますの で,著作権法第三十条(私的使用のための複製)の条文より逸脱する行為にな るためです.
但し,使用したい映像ソフト(ビデオ,映画など)の著作権者に許諾を求める事 が出来ますので,承認されたものはこの限りでありません.

[4] 生テープの価格は大差はないものと考えておりますが,相違は次の二点 にあるものと存じます.

  (1)一作品当りの生産数量
  (2)非常に高いライセンス料




■ 東宝ビデオ(口頭による回答)

[1] 著作権法第三十条(私的利用のための複製)に明記されている限られた 範囲内であれば合法である.またテレビやラジオの番組の録画や録音は『黙 認』されていると解釈しているが『合法』である.
告訴については前例はないが,違法行為に対しては,たとえ個人であっても場 合によっては告訴をするつもりである.たとえば,店頭にある自動複製機器によ るコピーは告訴の対象となる.

[2] 質問1に関連するが,著作権法第三十条(私的利用のための複製)に明 記されている限られた範囲内であれば合法である.

[3] 著作権法第三十八条の解釈が問題になっている.
端的に述べると,次の3項目全てに該当する場合は違法ではない.

  (1) 料金を取らない.
  (2) 出演者に報酬を払わない.
  (3) 営利を目的としない.

ただし,周辺の団体などの営利に結び付く場合は,民法上の問題になると言う 弁護士もいる.

[4](日本のソフトの価格が高い理由)

(1) マーケットスケールが異なる.アメリカの場合は,日本の7倍ぐらいのマー ケットがある.
(2) 現在のビデオソフトの約95%はレンタル市場対応である.
   当社の最近の作品では,約99%がレンタル用に販売されている.
(3) 業務用として販売しているため高くて当然である.
(4) セルの作品までも,レンタルビデオ店が無断でレンタルしている.



つづく


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