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私が5歳くらいの頃、黒松内町の母の実家に行ったときは、いつも馬に乗っ て遊んでいました。馬には鞍が付いていない裸馬だったため、手綱をしっか
り握っていなければ落馬してしまいます。また、走る度に馬の背骨が股に当
たるためゴツゴツして、乗り心地は良いとはいえませんでした。
そのとき、実家の玄関から母親が3歳の弟を抱いて出てきたのです。何を 始めるのか馬に乗ってじっと見ていたら、弟を抱きかかえながらウンコをさ
せているのです。私はトイレですれば良いのに、と思ったとき母親はキャー
と悲鳴を上げたのです。
私は、何が起きたのだろうと近くに寄ったとき、弟の尻からウドンのようなも のが出ているのです。母親が場所を変えたら、またウドンのようなものが出
てきたのです。そして、そのウドンのような物をよく見たら、なんと動いてい
たのです。それは回虫でした。私が子供の頃は腹の中に虫が住んでいるも
のと思っておりました。
それから数年後、小学校の休み時間の時の話です。私は給食当番をして おりました。給食室から、けんちん汁を運んでいるときワイワイガヤガヤと
何だか階段付近が騒がしいのです。同級生に「何が起こったの?」と聞いた
ら「友達が回虫を吐いた」と言うのです。
その話を聞いた同じ給食当番の女の子は逃げていきました。そこで私は、 事の真相を究明するために階段を上がって行きました。そして踊り場まで
来たとき、あっと驚きました。長さ20センチくらいの白っぽい回虫が、ぐった
りと横たわっているのです。私は回虫は尻から出る物と思っていましたが口
から吐いたのを見たのは初めてです。
寄生虫の話をする度に検便のことを思いだします。最近はO−157に関し て検便という言葉が出てくるため珍しくはありませんが、私が子供の頃は少
なくとも1年に1回は検便がありました。いまは、ヘラを使って試験紙に薄く
塗るだけですが、当時はマッチ箱に便を入れて学校に持っていき担任の先
生に渡しました。まだトイレが水洗化されていなかったため便を採取すると
きは一苦労でした。
私は、マッチ箱に便をギッシリ詰めて先生に渡したら突き返された記憶があ ります。それを家に帰って母親に見せたら、いきなり「捨ててきなさい!」と
言われてしまいました。私は、何が何だか分からず外に捨てました。
しばらくして父親が勤めから帰ってきて、「おい、こんな物が落ちていたぞ」と 言って包み紙に包まれた検便の箱を見せるのです。それは、さっき私が母
親に叱られて捨てた検便が入った箱だったのです。それを見た母親は呆れ
てトイレに捨てに行きました。私は初めからトイレに捨てれば良かったのに
と思いながら笑いました。
当時、鉄道公安官だった父親は、職業柄のためか、あるいは単なる貧乏だ ったためかよく分かりませんが、落ちている物は何でも拾ってきたもので
す。
【おわり】
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