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『週刊現代』1978年10月26日号から
極秘入手!池田大作氏と創価学会・公明党に関する公安 秘 調査報告書の戦慄
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警視庁、公安調査庁が月一回、80ページの「新文化研究」の中身
内部の不満分子が協力という幹部
指摘された戸田門下と池田門下の人脈区分
池田会長の“個人崇拝”を暴いた部分
法的根拠なき“調査”と怒る憲法学者
先に本誌十月五日号で報じた『創価学会・公明党の最高機密漏洩ルート』の一つは、やはり公安機関だった。この一年間ほど、言い換えれば、国会の“保革伯仲”がいっそう進んで以来、野党のスキャンダルが続々と漏れ出したルートをたぐっていくと突き当たるのは、公安調査庁や警視庁が作成しているマル秘報告書。
さらにその背後には莫大な国費と要員をつぎ込んだ息の長い、壮大な“仕掛け”があったのだ。幹部の日常を追い、人事の亀裂にクサビを打ち込んで協力者(内通者)に仕立て上げる――公安機関にとっては手慣れたいつもの手口だろうが、平穏でありたい一般国民には、不気味すぎる。
領収書不要の金を使って……
やっぱり公安当局は創価学会・公明党を「調査対象団体」にしていた。
本誌はある筋を通してようやく一冊の報告書を入手したが、マル秘扱いの証拠として配布先番号が表紙に打たれた、『新文化研究』という題字。A5版、月刊で約八十ページ。タイプ印刷の文書である。
提供者のA氏は「私の友人で公安調査庁と付き合いのある者がいまして、彼から手にいれたんですよ」というが、このマル秘レポートには、むろん、どこにも公安調査庁の名前は出てこない。
しかし、ある公安情報通はキッパリといった。
「公安調査庁は創価学会・公明党には相当以前から注目していたが、専従を二名つけたのは四十年頃で、翌四十一年六月から月一回、『新文化研究』というレポートを出すようになった。
『新文化』と名をつけたのは、池田会長の第三文明論を皮肉ったわけで、それに内容をカムフラージュする効果もあった。このレポートは公安関係筋ではニュー・カルチャーの陰語で通っているが、部数は約五十部。専従二人じゃ追いつかないから、外注の人もたくさん使っている。公安の予算は、領収書不要のカネだからね、調査費は……」
“領収書のいらないカネ”というのは、いうまでもなくスパイ活動費のことで、つまり内部からの情報提供者がいることでもあるが、ともあれ、まず『新文化研究』の中身を紹介しよう。
目次は、最初に「創価学会・公明党の○月」とあり、これは発行月(毎月一日)の前月の組織、幹部動向。
以下、「創価学会首脳の学歴と出身大学調」、「『公明党支持者つくり』と知識人」、「公明党の反共“口こみ”虎の巻」などと続き、学会本部の「人事」、創価学会と公明党の「日誌」となっている。「創価学会・公明党の○月」を読むと、この時点でレポートは「選挙のための学会」と規定している点が注目される。
「(創価学会の)ブロック態勢が選挙態勢であることはもちろんだが、活動方針の(1)(新人指導の徹底)も学会員の信心に王仏冥合の政治理念を徹底させることを主眼とするものであって○月の学会活動を挙げて選挙のために動員された……」
しかし、レポートがより問題視しているのは創価学会流の教義である。聖教新聞の編集幹部の論文を引用しながら、こう断じて、当局の危機感をつのらせている。
「……『聖教新聞はひとり創価学会の機関紙にとどまらず、人類の指導法であり、人間の機関紙である』と書いた。このように、創価学会ないし池田会長が中心となって世界が動いているというような論文は、これが信仰として個人の信条にとどまるならもとより自由だが、これによって世を救う政治をやろうというのだから問題である」
政教一致、王仏冥合をヤリ玉に上げているのだが、レポートの視点はなかなかこまかく、たとえば学会首脳の学歴・年代調査の項では人脈分析までしている。まず学会首脳部(理事会)は年齢的に「四十歳代が圧倒的に多い」事実を数字を上げて指摘したあと、「五十歳代以上はほとんど戸田前会長時代からの幹部である。
このことは、四十歳代が池田門下生として質量ともに創価学会の主力となっていることを示すものだろう」
と戸田派と池田派に分類してみせる。人脈分析としてはとても緻密とはいえないが、公安当局の関心のあり方を示していて、おもしろい。
内緒の手口もすっかり記録
国政選挙における池田会長と竹入委員長の「位置づけ」も、なかなか興味がある。レポートは、竹入委員長の存在をかなり低く評価している。
「公明党票が創価学会員とその周囲からその大部分を獲得することはいうまでもないので、党委員長の遊説より、池田会長の巡遊が有力な選挙準備となるわけである」
こういう評価を下すのは、池田会長の動向を克明に追跡してのことで、このレポートには池田会長の「巡遊先」での演説、講演をもらさず記録している。某県での総合本部幹部会では次のような池田演説が引用、記録されているが、内部発言だけにかなりラディカルだ。
「信心すなわち社会である。職場や地域社会の中で社会に根を張り、栄えることの実証できない人は信心がないといわれてもやむをえない。……
現在、大衆が苦しんでいるのも、すべて為政者、政治家の責任だと断定できる。為政者の持つ宗教、思想の優劣がすべて世界に鏡のように映ってくることを知るべきである」
どういうルートで入手したのか、創価学会の本部幹部会での池田発言も収録されているから不思議である。
「池田会長指導要旨――はじめに新任総務などを紹介し、自作の詩に朗読を吹き込んだレコードを自費出版(約五千枚)したから、みなさんの先輩や特別の功労者に贈呈したいと述べ、総本山にサクラの木数万本を植える予定だが、これには『池田サクラ』と命名してもらったと披露した」
そのあと、趣味の写真に一人感激したサマを紹介しながら、演説の模様を伝えている。
「もし日本に外国の侵略の暴動が起こったら、だれが責任を持って守るか。このままですむほど現実は甘くない。大きな反動があるでしょう。創価学会の任務と使命がますます重大になってくることは必然です。折伏だけ断じてやり抜き、日本を救っていきましょう」――とドギツイ言葉を紹介。
このほか公明党の反共“口こみ”虎の巻を紹介したり、公明党支持の知識人づくりなどの手口を報告しているが、量的には末尾の「人事」と「日誌」に三十ページ以上を費やしており、最も多い。「人事」では細大もらさず人事異動を書きつらねている。人事の不満が組織の亀裂につながるケースが最も多いので、そこを狙うためなのか。
「日誌」は一ページを上下二段に分け、上が創価学会、下が公明党となっていて、日程消化状況が要領よくまとめられている。池田会長や竹入委員長など幹部の動きはもちろん、訪問者の名前も実名入りである。
とにかく、このレポートを引き続き“愛読”すれば、創価学会・公明党の組織、幹部の動向が手にとるようにわかる。わからないのは、別途報告される幹部のプライバシーだけではないだろうか。それほど詳細をきわめた内容といっていい。
警視庁は公安二課が担当
創価学会・公明党の動向を調べているのは、公安調査庁だけではなかった。本誌が入手した警視庁の資料も十年以上前から担当警部を置き、現況、性格や問題点まで列記したリストを作り、所轄警察署を拠点に継続調査している。公安調査庁ほど詳しくないが、ちゃんと月報態勢になっているようだ。
「警視庁が創価学会に対する監視を強めたのは、五十年の創共協定締結以来です。学会が共産党と協定したというので驚いた警視庁では、右翼担当の公安二課が本腰を入れてマークしはじめたわけですよ。月に一回の報告書を作成しはじめたのは、それから」(警視庁詰め記者)
問題は、いつから公安当局が調査対象にしたのか、ということだが、公安情報に詳しい評論家・伊達宗克氏は「昔から聞いていますよ」という。
「創価学会は昭和二十年代後半から折伏大行進ははじめ、相手の家に押しかけて仏壇を焼き払うような事件がよく起きたものです。これは届け出があれば捜査しなければならないし、それ以前の調査するのが公安当局ですから、当然、創価学会は調査対象にされますよ。学会に限らず、過去に過激な行動をとった宗教団体は、やはり現在も調査対象になっています」
昨年、共産党に対する内閣調査室のレポートをスッパ抜いた評論家の吉原公一郎氏は、こんな見方をする。
「アメリカが『統一教会を宗教団体と認めない』と発表したのが昭和四十年前半ですけど、期を同じくして日本でも創価学会・公明党の調査をはじめたようです。そして池田―宮本会談ではっきり調査の対象にしたんじゃないですかね。だけど、ぼくは公安調査庁より内閣調査室の方が主役だと思っています」
公安調査庁というのは「破防法」(昭和二十七年施行)に基づく“破壊団体”を規制する役所で、公表されている調査対象団体は共産党、朝鮮総連、学生団体、右翼などだ。
しかし、「実際は共産党以外の野党も対象にされているといわれ、もしそうなら公明党が入っていてもおかしくない。そして公明党と創価学会と同一視すれば、憲法二十条に保障された宗教、信仰の自由に直接は触れないという理屈づけでしょうか」(宗教問題評論家・清水雅人氏)とみる向きもある。
憲法学者は、どうみるか。
「明確な犯罪を防止するため、必要最低限の調査なら許されるが、そうでないものは調査活動するだけで憲法違反ですよ。だいいち、公調の任務の中にそんなものがありますか。破防法のどこをみても、そんなものはありません。たとえ折伏で仏壇を破壊したとしても、それは器物破損で刑法の問題であり、破防法とは関係ない。司法警察のやることです」(東京学芸大教授・星野安三郎氏=憲法専攻)
しかし、現実に公安調査庁には専従スタッフが二名いるといわれ、「自分のところで作る資料は少なく、外注に出しているはず」(吉原氏)ともいう。さらに「領収書のいらないカネ」で、秘密取材もされているらしい。というのも、創価学会のある幹部自身、こういうからだ。
「内部に通報者がいることはほぼ間違いない。会長と副会長二人の話さえ、外部に筒抜けなんですからね。会長と副会長の話がわかるのは機構上、総務クラスまでで約三十名、この中にいるとにらんでいます」
年間百億円もの予算で収集
調べられる側の創価学会と公明党が違った対応をみせる。矢野洵也公明党書記長は、そういうことは信じたくないが、もしそれが事実ならば、政治活動と宗教、言論の自由を保障している憲法に抵触するので断固抗議しなくちゃいかん」と怒る。
これに対して、創価学会本部は「そういうものがあるとは聞いたこともありません。どういう根拠で、私たちを調査対象にするのでしょうか」とノンビリしたものだ。
それもそのはず、創価学会は調査されていることを知っていたからだ。創価学会最高幹部の一人は平然と語る。
「公調などは、現在も調べているんですか。しかし、田中内閣のときは、調査が切れていたはずですがね……。田中政権が成立する前、池田会長は『自民党でいちばん話のわかるのは田中だろう』といっていて、事実、田中にはお世話になった。しかし、政権は田中だけではない。となると、学会・公明党を公調などを使って調べるのは当然で、驚くことはないですよ。そりゃ調べていますよ……」
創価学会・公明党の陰に田中あり、と見立ててのゆさぶりがこうした公安機関の暗躍であり、その結果の「機密漏洩」だ、ということなのか。さらに自民党総裁選――即ち次期首相の座獲得戦争の激化が、公安機関まで巻き込んでいるとしたら、それはもう税金で運用される国家機関の仕事の範囲を越えているのではないか。
では、なぜ「対立する政権」は創価学会・公明党を洗い上げているのだろうか。
「八〇年代はいやでも連合政権時代に突入します。その場合、どの野党が連合の相手に選べるか、というのが自民党政権の最大の関心事です。そういう政治戦略に立ち、全野党のデータを集めているわけで、とりわけ創価学会・公明党は狙われます。いまの段階から、いつでも利用できる形で弱点、動向をつかんでおけば、いつでも裏工作に使えますからね。当然、内部の情報提供者の養成もしていると思います」というのは東京学芸大教授・阪上順夫氏。
公安調査庁は、例によってノーコメントである。ただ、このところ予算がえらく膨張しているのは否定できず、今年度九十九億八千三百万円。人員は十年前とほぼ同じなのに予算は三倍以上の増加である。そのうち調査活動費は十二億一千八百万円、これはすべて情報入手工作に使われる。職員二千十九名(定員)は調査一部と二部に配属され、一部一課は共産党中央、二課は共産党地方、文化団体、三課は労組、四課は学生団体と任務が決まっている。
創価学会・公明党担当は調査第二部第三課で、法務省組織令によれば、この課は「爆発物使用、公務執行妨害」が職務内容とされているが、実際は右翼、宗教団体を調査している。
「公安調査庁の法律上の職務内容はまったく形式だけで、実際には創価学会・公明党だけではなく、各野党や大衆団体から自民党の派閥抗争まで調べ上げている」(公安担当記者)
――となると、コトは一宗教団体の内紛やスキャンダルにとどまらない。権力を握った側の黒い手が垣間見えてくる。
(取材/土田勝実、中里憲保)
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